ペキニーズ
Pekingese
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ペキニーズは中国歴代帝国宮廷内の限られた領域で限られた人物によってのみ飼育された門外不出の犬種でした。政変により原産国である中国では絶滅し、イギリスを介して紹介されましたが、犬種名には北京の地名があてられています。打ち解けてくれるのは飼い主だけ、というところもはまってしまう理由のひとつでしょう。
基本情報
体型 ⇒ 小型犬
体高 ⇒ 20㎝くらい
体重 ⇒ 5㎏くらい
被毛 ⇒ 長くて粗い直毛
カラー ⇒ あらゆる毛色
原産国・地域 ⇒ 中国
寿命 ⇒ 13歳くらい
ペキニーズの歴史
~中国の歴史を知る犬です。~
ペキニーズは1000年以上に渡り、中国皇帝の独占物として育種され、宮廷内で寵愛を受けてきた特殊な犬種です。8世紀の唐の時代には宮廷内の文書にすでにこの犬種の記述があり、その飼育記録が残っています。呼称に変化はあるもののサイズや被毛色に大きな変化は見られません。現代の「犬種標準」にあたる基準が宮廷内で定められており、基準に合わない子犬は淘汰され、ペキニーズに危害を加えたものは死罪になるなど厳しい管理の下で繁殖が続けられたようです。
寵愛を受けた皇帝の柩を墓に導くのはペキニーズの仕事で、1911年西太后の葬儀では「モータン」という名のペキニーズが柩を先導しました。
1860年アヘン戦争のとき、イギリス軍が北京の宮殿に突入した際には、白人にペキニーズが渡るのを恐れ自ら殺した多くの犬の死体が発見されています。その中で、生きた5頭のペキニーズが保護され、イギリスに渡りビクトリア女王の保護を経て今日までその種を保持しています。
保護された5頭のうちフォーンとホワイトのパーティカラーの1頭がビクトリア女王に献上され、『ローティ』と名づけられて1872年までウィンザー城で生存していました。『ルーティ』が死んだときには、宮廷動物画家だったサー・ランドシーアに在りし日の姿を描かせたほどビクトリア女王にも愛されていました。イギリスでも宮廷や貴族だけに飼育されていましたが、1893年にショーに出されてからは、瞬く間に人気犬種となりました。
ペキニーズでは古代中国では「獅子犬」「太陽犬」「袖犬」と3つの名で呼ばれていました。「獅子犬」とは、ライオンのような後駆に向かって先細りの体形を示し、「太陽犬」とは、太陽のような赤みがかった金色の被毛を指し、「袖犬」とは、袖に入るサイズとウェイトを示します。これは現在もペキニーズの犬種標準とのものです。ペキニーズは、原産地である中国の「北京」から「ペキニーズ」と名づけられました。
余談ですが、昔々キヌザルに恋したライオンが、彼女と結婚できるように神様に小さくしてもらったのがペキニーズっていう伝説が中国に残っているそうです。
ペキニーズの性格・気質
人にこびることなく、自尊心が強く大胆、程度を超えた頑固さはこの犬種の由来とは無関係ではないでしょう。ペキニーズは皇族の衣装の袖に入って宮廷内を移動したといわれており(「袖犬」)、抱かれることを好まない独特の性質にも影響が見て取れます。
ペキニーズは小型犬にもかかわらずとても勇敢な性質を持っています。自分から喧嘩を仕掛けたりはしませんが、争いになると後へ引かない負けず嫌いな犬種です。飼い主やその家族には忠実ですが、見知らぬ人とは距離を置き、打ち解けるまでにかなり時間がかかります。独立心が旺盛で頑固な面があり、あまり感情を表に出すタイプではありません。ペキニーズは犬らしくない犬で、むしろネコのようにマイペースで、自由気ままで甘えん坊です。
家族の前では気を許して遊び好きな面を見せますが、子供の相手をするほどの活発さはなく、それほどの運動能力も持ち合わせていません。
他の犬種にはあまりない独特な性格が、人気の理由でもありますが、度が過ぎて無駄吠えが多いわがままな犬にさせないために、甘やかさない程度にコミュニケーションをよくとることが大切です。
ペキニーズの飼育
玉を転がすような魅力的なローリング歩様が特徴で、屋外をのんびりと歩いたり、室内で遊んだりすることが大好きです。ペキニーズはもともと愛玩犬として飼われていたこともあり、室内での運動程度で問題ありません。ペキニーズ自体が散歩をあまり好みませんが、年をとるとよけいに動きたがらなくなるので、時々軽い散歩に連れて行くのもいいでしょう。
暑い中、長い間外で遊ばせていると、熱中症を起こし、命に関わることもあるので、暑い地域では冷房の効いた室内で飼育させましょう。涼しい気候の地域でなら外で過ごさせることもできますが、寝床は室内に用意してあげるのが理想的です。どちらかというと、アパートなどの狭い部屋での飼育にぴったりの犬種といえます。
ペキニーズは小型ですが、意外とがっしりしていて、頭部が大きく洗練された独特の体型をしています。鼻吻が短く、シワがあり、黒い鼻を持っています。目は暗色です。
メスがオスより体重が重い珍しい犬種です。
ペキニーズの被毛・毛色・お手入れ
ペキニーズの最大の特徴は、やわらかくまっすぐに伸びた長く豊かな被毛です。しっぽは背中の上に巻いていて飾り毛があり、またしっぽだけでなく全身のあらゆるところに飾り毛があります。ライオンのような首のたてがみが大変豊かなのもペキニーズの大きな特徴です。毛色はあらゆるものがあります。
ペキニーズの非常に豊かで長いダブルコートの被毛は、入念な手入れが必要です。少なくとも週に3~4回のブラッシングやコーミングはもちろん、定期的にシャンプーをすることや、鼻周辺のシワに汚れがたまらないように、食後などにきれいに拭いてあげるように心がけましょう。ただしシャンプーはコートを傷めるので頻繁に行うのは避けたほうがよいでしょう。
顔周辺の毛が目に入って眼病になることもあるので、定期的にトリミングしてもらったほうがいいでしょう。
全身が長い被毛でおおわれていますが、シーズーのように顔にかかることはありません。
ちなみに顔は黒いほうが望ましいとされています。
ペキニーズの健康管理
感染症を防ぐために、鼻の周りなどにあるしわの間を拭いて、いつも清潔に保つよう心掛けてください。肛門の周りの被毛の汚れも定期的にチェックしてあげましょう。
運動量が少ないペキニーズは、肥満にならないように注意しましょう。室内で過ごす事が主となりますので、食事のコントロールはしっかりと把握して管理することが大切になってきます。
成犬では1日1~2回を目安に与えます。短頭種の犬に共通して言えることですが、口の形から一般的なステンレスの食器で餌を与えるよりは、底の浅い食器で平皿のような形だと食べやすいようです。
また小型犬に多い椎間板ヘルニアにならないように、激しい運動や高いところから飛び降りるのは避けましょう。ソファーなど高い位置からの上下ジャンプや階段の昇り降り、滑りやすいフローリングを走り回ることで、潜在的な背骨や膝関節の問題を発生させ、徐々に変形性関節症を進行させ、痛みのために足を引きずって歩くようになる場合もあるので注意してあげましょう。
ペキニーズは鼻先が潰れていて、それが人間に似た様々な表情を生み出します。しかし、その顔の構造のせいで、体温の放散が効率的にできなくなってしまい、暑さに極めて弱い面があります。激しい運動後や気温が高い日には呼吸が荒くなることもあります。特に夏場は温度管理に十分気をつけてあげましょう。
また時々いびきをかく傾向があります。傷つきやすく、毛が入りやすい大きな目は眼病になりやすいので注意しましょう。
心臓機能が弱く、麻酔に敏感です。出産は帝王切開になる場合が多いとされています。